令和2年10月1日 建設業法改正について
令和2年10月1日から改正建設業法が施行されます。
今回の改正の背景には建設業界の働き方改革の促進、建設現場の生産性向上や持続可能な事業環境の確保の必要性があります。その為、今回の改正では全体的に規制が緩和されたものが多いです。
それぞれの詳細については下記リンクをご参照ください。
- 経営業務管理責任者の規制の合理化について
- 社会保険の加入の義務化について
- 監理技術者・主任技術者の配置要件の緩和について
- 円滑な事業承継制度の創設について
- 長時間労働の是正(工期の適正化等)について
経営業務管理責任者の規制の合理化について
これまで建設業許可の要件として、建設業の経営に関し過去5年(または6年)以上の経験者が役員にいることが必要とされてきましたが、今回の改正でその規定が見直され、要件が緩和されました。
(旧)経営業務管理責任者を配置すること
(新)事業者全体として適切な経営管理責任体制を有すること
新基準の「経営管理責任体制」とは
次の(1)または(2)により、新基準を満たすものとされます。
さらに、経営管理責任体制の一つとして、社会保険への加入も義務付けられることになりました。
(詳細は 社会保険の加入の義務化について へ)
(1)常勤役員等のうち一人が、下記の①~③のいずれかに該当する者であること。
※ 「常勤役員等」とは、法人の場合は常勤の役員、個人の場合はその者又は支配人のことをいいます。
① 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
② 建設業に関し経営業務管理責任者に準ずる地位にある者として、
5年以上経営業務を管理した経験を有するもの
③ 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営
業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
※「建設業に関し」というのは「業種にかかわらず」となります。
以下(2)においても同じです。
(2)常勤役員等のうち一人(A)が、下記の①または②のいずれかに該当し、さらにその常勤役員等を
直接 に補佐する者(B)として、下記のア~ウに該当する者を置くこと。
A常勤役員等の一人に求められる要件(次の)①または②
① 建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を
含む 5年以上の建設業の役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者
② 建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を
含む 5年以上の役員等の経験を有する者
B要件となる常勤役員等を直接補佐するものに求められる要件(次のア~ウ全て)
ア 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
イ 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
ウ 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者
※ ア~ウは、一人が複数の経験を兼ねることが可能です。
旧基準との比較
上記の(1)は旧基準とほぼ同一ではありますが、建設業の経験が「業種にかかわらず」という点で緩和されています。これまでは、許可を受けようとする業種と同一業種の場合は5年以上の経験が必要で、許可を受けようとする業種と異なる業種の場合は、6年以上の経験が必要でした。
上記の(2)は新設された制度です。
「一定の経験のある常勤役員A + それを補佐する者B」という体制により、要件をみたすものとされます。
その他詳細な書類や取り扱いは、各管轄の行政庁により異なります。
社会保険の加入の義務化について
経営管理責任体制の要件の一つとして、社会保険への加入が義務付けられるようになりました。
適用除外となる場合を除き、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の三つの保険について未加入の場合は、建設業許可を受けることができません。
監理技術者・主任技術者の配置要件の緩和について
施工する工事現場には、配置技術者(監理技術者または主任技術者)を配置しなければなりませんが、今回の改正で、その配置要件が一部緩和となりました。
1.監理技術者の現場専任制の緩和
改正前の制度では、監理技術者若しくは主任技術者は、請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事については、その工事現場に専任が必要でした。今回の改正では、監理技術者に関してはその規定が緩和され、監理技術者補佐を専任で置いた場合、監理技術者は2つの現場の兼任が可能となりました。
なお、監理技術者補佐を置いた場合の監理技術者のことを「特例監理技術者」といいます。
監理技術者または特例監理技術者、監理技術者補佐の要件は次の通りです。
(1)監理技術者又は特例監理技術者の要件
改正前の監理技術者の要件と同じです。
なお、現場専任が必要な監理技術者や特例監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受け、
さらに監理技術者資格者講習の受講が義務付けられています。
(2)監理技術者補佐の要件
次の①か②のどちらかです。
① 主任技術者の資格を有する者のうち、一級技術検定の第一次検定に合格した者
(一級施工管理技士補といいます)
② 監理技術者の資格を有する者
なお、監理技術者補佐として認められる業種は、主任技術者の資格を有する業種に
限られる。
2.主任技術者の配置要件の緩和
一部の専門工事については、一定の条件を満たすことで、下請業者は主任技術者を配置しなくてもよいことに
なりました。一定の条件とは次の(1)~(5)です。
(1)「特定専門工事」であること
特定専門工事とは、下請代金の合計額が3,500万円未満の鉄筋工事と型枠工事のことです。
また型枠工事とは、大工工事またはとび・土工工事のうち、コンクリート打設に用いる型枠の
組立てに関する工事のことです。
(2)元請業者は注文者から書面による承諾を得ること
(3)元請業者と下請業者の書面による合意をすること
(4)元請業者が配置する主任技術者は1年以上の指導監督的実務経験があり、その現場に専任であること
(5)再下請契約の禁止
円滑な事業承継制度の創設について
現行の建設業許可制度では、事業譲渡や合併、相続等により事業の承継を受けたとしても建設業許可は承継できないため、承継を受けた建設業者は再度建設業許可の取得をしなければなりませんでした。
今回の改正により、事業譲渡や合併等に際し、事前認可の手続きにより円滑な事業承継が可能になる仕組みが構築され、許可の空白期間なく事業承継が可能になりました。
また、個人事業主が亡くなった場合の相続手続きも可能となります。
事業承継に係る事前認可について
(1)“事業承継”と事前認可について
・事業譲渡 …個人事業主同士や、法人成りも含みます。
・合併
・分割
認可を受けると、承継人は建設業者としての地位を承継します。「建設業者としての地位を承継する」
とは、建設業許可を受けたことによって発生する権利と義務のことです。したがって、被承継人が受け
ていた経営事項審査や監督処分についても承継されることになります。
ただし、建設業法第45~55条による罰則は、被承継人に固有に適用されるもののため、承継人には承継
されません。
(2)認可申請が可能・不可能なケース
被承継人(譲渡人、消滅会社、分割会社のことです)が複数業種を取得している場合、承継人(譲受人、
存続会社、承継会社のことです)への承継は「全部」でなければなりません。
被承継人が一般建設業を保有している一方、承継人が同じ業種の特定建設業を保有している場合、または、
被承継人が特定建設業を保有している一方、承継人が同じ業種の一般建設業を保有している場合は認可申請
が出来ません。
ケース①)
被承継人:土木(特定)、舗装(特定)
↓
承継人 :建築(一般)
この場合、被承継人の土木と舗装の許可を承継させるための認可申請は可能です。
ただし、土木のみや舗装のみといった「一部」の承継はできません。必ず「全部」の承継であることが
必要です。
なおこのケースの場合、業種が異なるため、一般と特定の種類は異なっていても構いません。ただし
承継人においては、経営管理責任者や専任技術者をはじめとする建設業許可要件を満たすことは当然
必要になります。
ケース②)
被承継人:土木(特定)、建築(特定)、電気(特定)
↓
承継人 :土木(特定)、建築(一般)
この場合、建築について被承継人と承継人とで、一般と特定の種類が異なるため、許可を承継させるため
の認可申請は不可です。
ただし、承継人があらかじめ建築(一般)を廃業すれば認可申請は可能となります。なおケース①と
同様、承継人においては、経営管理責任者や専任技術者をはじめとする建設業許可要件を満たすことは
当然必要です。
ケース③)
被承継人:土木(特定)、建築(一般)、電気(特定)
↓
承継人 :土木(特定)、建築(特定)
ケース②とほぼ同じですが、建築について一般と特定の種類が逆になっています。この場合には、
被承継人があらかじめ建築(一般)を廃業したほうが良いでしょう。
(3)その他
譲渡等の何日前までに認可申請しなければならないか、認可に必要な確認書類など等の詳細や実際の運用
は、各許可(認可)行政庁により異なります。なお、認可に必要な書類のうち、
通常の許可申請とは異なる主な必要書類としては下記のものがあげられます。
・譲渡等契約書
・(新設分割の場合は)分割計画書
・譲渡等を決定する株主(社員)議事録総会
承継後の許可の有効期間は、承継の日から5年です。これは被承継人や承継人が承継日より前に保有していた許可期間にかかわらず適用されます。
相続について
建設業許可を受けていた個人事業主が無くなった場合、30日以内であれば相続の認可申請が可能です。